飲食店の居抜きの内装工事の期間はどれぐらいかかる?

飲食店の居抜きの内装工事の期間はどれぐらいかかる?

飲食店の開業にあたっては内装工事に掛かる工期を把握し、店舗物件を契約したら開業までのスケジュールを立てる必要があります。店舗物件には前店舗の内装を使用する居抜き物件とコンクリート剝き出しの状態から工事をするスケルトン物件があります。居抜き物件で店舗開業する場合は内装工事の工事期間と費用を安く抑えることができます。
当記事では居抜き物件で店舗開業する場合に必要な内装工事の工事期間を解説します。スケルトン工事の期間の詳細は別記事で紹介していますので、併せて参考にしていただければと思います。

■目次
1.店舗物件選びで注意したいこと
2.居抜き物件における内装工事の工期とスケジュール
 2-1.居抜き物件の内装工事の工期の目安
 2-2.居抜き物件の店舗デザインは事前に考えておく
 2-3.厨房機器は早めに決める
3.内装工事内容紹介
 3-1.居抜きの場合の内装工事
 3-2.スケルトンの場合の内装工事
4.まとめ

1.店舗物件選びで確認したいこと

居抜きの内装工事はスケルトン物件で開業する場合と比較して内装工事費用を大幅に安くすることができますが、店舗物件選びに失敗してしまうと工事費用が大きく膨れ上がることもあります。事前に注意して見るべきポイントを理解しておけばこのようなトラブルを防ぐことができます。

1) 前店舗の業種

前店舗の業種が同じであれば使用する厨房機器や空調などの設備が同じであるため設備の追加の内装工事が必要にないことがほとんどです。但し、物販の店舗だった場所に飲食店を造る場合は建物に用意されている電気やガスの容量が足りず、設備の追加工事に費用と時間がます。また、同じ飲食店でもカフェやバーだった場所にレストランを造る場合は事前に容量が問題ないか確認が必要です。

2) 店舗付近の住民属性や近隣の施設

駅からの近いと賃貸料が高いですが人通りが多いためお客様の来店が見込めます。近くにオフィス街あると昼休みのサラリーマンやOL、学校があると食べ盛りの学生の来客が見込めます。周辺を歩いてみたりして住民属性を見極めると良いかと思います。

3) 貸店舗の内装制限の有無

店舗物件によっては建物のオーナーの意向等で内装工事に制限がある場合があります。開業予定の店舗のイメージが決まっていればをオーナーに確認し、内装工事開始後にトラブルが起こることのないように注意してください。

4) オーナーから家賃補助等の有無

一般的に物件の契約日から賃料や設備代がかかりますが、店舗物件によっては開業日までもしくは工事開始から何ヶ月か先まで保証金がつく場合もあります。費用面でオーナーに相談できる場合もありますので開業前の家賃や設備費用の補助があることは確認しておくと良いかと思います。

2.居抜き物件における内装工事の工期とスケジュール

居抜き物件に内装工事を施工して店舗開業する場合はスケルトン物件に内装工事を施工して店舗開業する場合よりも工期が短くなる傾向になります。内装工事に掛かる工期について具体的にご紹介します。

2-1.居抜き物件の内装工事の工期の目安

30坪の店舗を居抜きで工事する場合、目安として一週間~二週間かかります。(厨房をそのまま使用して客席の内装だけを変更する場合を想定)
※同じく30坪のスケルトンの店舗物件を工事する場合、目安として一ヵ月~一ヵ月半かかります。
以上のことから居抜きの店舗を開業する場合、店舗物件の契約日から起算して二週間から三週間後を開業日とし、内装工事の工程を立てていくことになります。注意点としては物件の契約前に内装会社に見積を依頼しても概算金額でしか貰えない場合や、物件自体が変更になる可能性があることから見積を貰えない場合もあります。内装会社への見積依頼は物件が決まってから行うことが一般的です。

2-2.店舗デザインは事前に考えておく


店舗デザインが明確に決まっていれば先ほどの工期だけで開業までのスケジュールを立てられますが、店舗デザインから内装業者に相談する場合は内装業者との打合せやデザインの選定にも時間がかかります。目安として三日から五日ほど余裕を持たせておいてください。理想としては店舗物件を契約する前の段階で内装デザインの方向性を決めておくとスムーズに内装工事を進められます。
店舗デザインを全て内装業者に依頼することも可能ですが、内装工事完成後に「やっぱりあれをこうしたい」、「ここの部材を変更したい」などの仕様変更や追加の要望が生じやすくなります。そうなると内装工事の工期が伸びることは勿論、追加の内装工事費用もかかります。打合せ前に店舗のコンセプトやイメージを準備しておく方が内装工事開始前に仕様をガチっと固めることができれば、店舗完成後に愛着が沸くメリットもあります。完成イメージに近い店舗の写真があれば準備しておき、写真や内装デザインの中で特にこだわりたいポイントは先に決めておきましょう。

2-3.厨房機器は早めに決める


また、使用する厨房器具は店舗物件を探すタイミングで大まかにでも決めておくと内装工事がスムーズになります。厨房機器の数やスペックによって必要なガスと電気の容量が決まり、建物に引き込まれている容量が足りない場合は設備工事が必要になるためです。

3.内装工事の内容紹介


内装工事の工期とスケジュールを決めるうえで工事内容を知っておくとイメージがつきやすくなるので是非押さえてください。

3-1.居抜きで開業する場合の内装工事


居抜き物件で開業する場合に注意すべき内装工事のポイントをご紹介します。

1)厨房区画の工事



・既設のガス配管の撤去:厨房機器を変更する場合はガス管を取り外し撤去します


・既設の厨房機器の撤去:いらなくなった厨房機器を撤去するには工事費用がかかります。内見する際に不要な暫時物があるかチェックしておくとよいでしょう。


・厨房機器の搬入:新規で使用する厨房器具を厨房に納入します


・ガス配管のつなぎ工事:新規の厨房機器にガス管をつなぎます


・電気ガスの容量上げ(必要に応じて):電気やガスの容量が足りない場合を増設します

2)客席の工事

①家具造作:テーブルや椅子、ソファなどを制作し設置します。既製品のものを使用すれば安く済みますが、既製品のサイズが店舗のスペースに合わない場合やオリジナルの家具で店の雰囲気を演出したい場合には必要となる工事です

②内装仕上工事:天井や壁のクロス貼り、床のシートまたはタイル貼り、仕上げ木板張りなどの工事です。その他、インテリア工事やカーテン取付工事なども含みます。

③サイン工事:入口の外看板やロゴ、メニュー等を作成します。

3)その他

①保健所申請:飲食店を営業するには事前に保健所への申請が必要になります。検査項目には厨房に2層シンクを設ける、客席との間にスイング扉を設けるといったものがあります。内装業者に依頼すれば見積に含めてくれることがほとんどです。

②消防申請:居抜きの場合でも防火上問題ないか営業開始前に消防署に確認する必要があります。消火器や火災報知器、誘導灯が設置されていれば基本的に問題ありません。

3-2.スケルトン物件で開業する場合の内装工事

スケルトンの内装工事内容を把握すると、スケルトン物件を検討する際に役立ちますので併せてご理解いただければと思います。

1)厨房の床下周りの工事

シンクや厨房機器を設置するため、ガスや給排水の配管を床下から通しておく必要があります。流れとしては土間を打設する前に各配管を床に突きあがるように準備しておきます。

①ブロック積:コンクリートブロックを積んで厨房の床下用の段差を作る


②左官工事:コンクリートブロックにモルタルなどの塗料を塗り防水加工する


③給排水工事:シンクやトイレの水が流れる配管を設置し、床の上に突き出しておく


④ガス配管工事:フライヤーやガスコンロ等のガスを使用する熱機器に接続するガス管を突き出しておく


⑤土間打設:厨房床にコンクリートの土間を流し込み、床を固める


⑥防水工事:厨房床と床から100センチを目安に防水加工する

2)厨房その他の工事

①空調工事:店内のエアコンと室外機の設置、エアコンから室外機まで冷媒管と呼ばれる管を通す


②換気工事:厨房や店内に換気扇を設置し、天井裏のダクトを配置し屋外に排気する

③電気と厨房機器の接続:動力と呼ばれる大きい電力を使用する厨房器具は電気を直結させます。その他の機器はコンセントから電気を繋ぎます

3)客席の工事

①仮設工事:工事を始める前の準備作業と工事中に必要な設備を設置する工事です。養生(仕上がった面に傷をつけないために保護する事)や、仮設電気・仮設水道の設置などが該当します


②軽天工事:軽天は軽い鉄で出来た棒状の材料で天井や壁の骨組みになります。軽鉄や軽量鉄骨下地、LGSとも呼ばれ、壁や間仕切りを作る際の土台になります。


③GL工事:コンクリート壁に対して特殊なボンドを塗り、壁の下地となるボードを貼り付けます。


④電気配線:照明やスイッチ、コンセントの設置をはじめ、換気扇やエアコンへの電源配線、ブレーカーの設置などの工事が該当します。その他、スピーカーの設置やパソコンに接続するLAN配線等も含まれます。軽天で壁や天井の下地を作り、ボードで閉じる前に行います


⑤壁、天井のボード貼り:軽天で作った骨組みにボードを張って壁を作ります


⑥建具造作:入口やトイレ、スタッフルームなどに扉を設置する工事です。建具には木製やメラミンと呼ばれる樹脂板製、アルミ製、鉄製、ガラスなど様々な種類があります。

⑦間仕切り壁設置:通路や個室などの壁を作成します。やり方は天井や壁などを軽天で作る方法と基本的に同じです。


⑥カウンター造作:主に木材を使用してカウンターを作ります

4.まとめ

居抜きの内装工事は厨房設備をそのまま使用できれば一週間~二週間ほどで済みます。但し、物件選びの際には前のテナントや不要な暫時物がないか等、注意して見る必要があります。客席の内装工事のボリュームを抑えてしまうと前の店舗が店名を変えただけと認識されてしまうこともありますので、レイアウトは変えなくても天井や壁、床のデザインは一新し、可能な限り前のテナントのイメージを払拭したオリジナリティのある店舗にすることが重要です。工事費を抑えつつも可能な限り、店舗独自の色を出す工夫を心掛けてください。