宅配デリバリーの内装工事とは!?

ウーバーイーツや出前館などの宅配サービスが人気を集めており、大手チェーンだけでなく個人店でも宅配デリバリーを始める飲食店が増えています。以前は宅配デリバリーを開始するためにはスタッフや配達用のスクーター、出前用のメニューなどを全て自前で用意する必要がありました。今ではデリバリー専門各社がそれらを全て用意してくれるため、飲食店側は容器などを準備するだけで簡単に宅配デリバリーを始められるようになりました。

外部のデリバリーサービスを利用する場合は各社に約30%の手数料を支払うことにはなりますが、それでも少ない初期投資で売上をアップさせることのできる宅配デリバリーは導入を検討する余地があるかと思います。
同じく料理を店内だけでなくお弁当やテイクアウトで提供する仕出しも始める店が増え注目されています。

注意しなければならないのは、宅配デリバリーや仕出しを始めるにあたりルールを知っておかないと違法になるということです。ルールを正しく理解することは店舗のためではなくお客様の安全を守ることにも繋がります。是非それぞれのメリットとルールを把握し、導入を検討していただければと思います。

■目次
1.宅配デリバリーや仕出しを始めるメリット
 1-1.客席数や回転率に関係なく売上を伸ばせる
 1-2.店舗の知名度を上げ新規顧客を開拓できる
2.宅配デリバリーの注意点
 2-1.飲食店営業許可でできること
 2-2.飲食店営業許可取得に必要な要件
3.仕出しの注意点
 3-1.仕出しの営業許可がなくても可能なこと
 3-2.仕出しの営業許可で可能になること
 3-3.仕出しの営業許可取得に必要なこと
4. まとめ

1.宅配デリバリーや仕出しを始めるメリット


宅配デリバリーと仕出しを始めるメリットについて2点ご紹介します。

1-1.客席数や回転率に関係なく売上を伸ばせる
飲食店の売上は[客数×客単価」で決まり、売上を伸ばすにはお客様の数を増やすか単価を上げる必要があります。多くの飲食店はランチやディナーなどの決まった時間帯に集中してお客様が来店するため、売上を伸ばすためには回転率を上げることが重要になります。回転率を上げる代表的な工夫として、以下の3点があります。

①注文から提供までの時間を短くする
②時間をかけずに食べられるメニューを増やす
③食事を終えられたお客様の退席をお願いする

これらを実施して回転率を上げることができても限界はあります。例えば、客席数が20席のレストランであればランチ時間帯に3回転できれば良い方だと思います。

宅配デリバリーは店舗の客席や回転率に影響されずキッチンが回っていて調理可能であれば売上を伸ばすことができます。また、各種デリバリーサービスでは配達だけでなく支払もアプリを通じて入金されるためお金の受け渡しもしなくて済みます。
仕出しでは、ランチ時間帯の前にお弁当を作りおきしておくことで忙しさを分散させることができます。

1-2.店舗の知名度を上げ新規顧客を開拓できる
飲食店の売上は立地によって大きく左右されますが、宅配デリバリーを始めることで裏路地や駅から離れた場所に店を構えている場合でもお客様に店舗の情報を認知させることができます。認知させるためには近隣の住宅やオフィスにチラシを配ったり、宅配サービスに登録して広告を表示してもらったりする方法があります。

店舗の前で仕出しを行うことも近隣の方にお店をアピールすることができ、いきなりお店には入りづらいと考えているお客様が[どんなメニューがあるか]、[どんなお店なのか]を知る良い機会になります。

これまで店舗を知らなかったお客様に対して店舗を認知させるとともに、宅配デリバリーや仕出しでの注文を通して「美味しかったから今度店舗にも行ってみようかな」と実店舗への来店も促すことができます。新規顧客の開拓ができるということは宅配デリバリーと仕出しの大きなメリットではないかと思います。

2.宅配デリバリーの注意点


宅配デリバリーで提供できる料理には制限があります。また、宅配デリバリーのみ行う店舗であっても営業するには通常の飲食店と同様に保健所の営業許可が必要になります。宅配デリバリーの注意点と営業許可取得に必要な要件を記載します。

2-1.飲食店営業許可でできること
厨房で調理したメニューを宅配デリバリーで販売する場合、飲食店営業許可の範囲内となるため基本的には新たな手続きや工事は必要ありません。しかし、調理した肉や魚をお弁当や定食とういう形ではなく単体で販売する場合は飲食店営業許可とは別の区分になるため、別途手続きが必要になる場合もあります。どのようなメニューを宅配デリバリーで提供する場合でも一度管轄の保健所に連絡し、提供するメニューについて問題がないか確認を行ってください。

2-2.飲食店営業許可取得に必要な要件
飲食店営業許可取得に必要な要件は地域の保健所によって若干異なるため、工事内容と店舗の図面が完成したら管轄の保健所に行き事前に確認を行ってください。必要な要件の具体例としては以下のようなものがあります。

・厨房にシンク1槽のサイズが[幅45cm×奥行き36cm×深さ18cm以上]の2層シンクが設置されている
・厨房内、トイレ内にそれぞれ[幅36cm×奥行き28cm以上]の手洗器が設置されている
・冷蔵庫や製氷機、食洗器、オーブンなどの厨房機器が厨房内に収まっている
・厨房を客室が扉で仕切られている
 ※床から天井まで間仕切りされている必要はない

3.仕出しの注意点


仕出しは提供する料理の内容によって飲食店営業許可とは別に仕出しの営業許可を取得する必要があります。仕出しの営業許可がなくても可能なこと、仕出しの営業許可で可能になること、仕出しの営業許可取得に必要なことの3点を記載します。

3-1.仕出しの営業許可がなくても可能なこと
お弁当と判別されない料理は飲食店の営業許可さえあれば手続き等なしで提供が可能です。米がついていない惣菜、おかず、パンなどが該当します。炒飯やオムライスなど米を使った料理はお弁当の扱いになり提供できません。その他、店内で提供した料理の食べ残しをお客様がタッパー等に入れて持ち帰ることは可能です。

3-2.仕出しの営業許可で可能になること
仕出しの営業許可を取得することにより米がついている惣菜やおかず、お弁当が提供可能になります。また、作り置きした弁当の販売も可能になります。

3-3.仕出しの営業許可取得に必要なこと
仕出しの営業許可を取得するためには厨房と客室が、天井から床まで扉等で区分されている必要があります。また、保健所で営業内容の変更申請が必要です(申請の手数料などはかかりません)。
厨房の客室がカウンターなどで天井から仕切られていない店舗のレイアウトであっても、店舗の営業時間と仕出しの営業時間を区別し時間帯によってどちらかのみ行うことは可能です。営業許可内容を仕出しに変更してもイートインはそのまま可能です。

4.まとめ


宅配デリバリーと仕出しは店舗の客席や回転率に関係なく売上を伸ばす手段として導入する店舗が増えています。一方で、必要な手続きを怠ったり、許可されていないことを行ったりしてしまうと違法となり思わぬトラブルを招くこともあります。

宅配デリバリーと仕出しの導入を検討する際にはそれぞれのメリットと必要な手続きや工事、許可の範囲でできることを正しくご理解いただき、必要に応じて管轄の保健所に問題ないか確認するようにしてください。