宅配デリバリーやテイクアウトを始める飲食店が増えてきている中、店舗のメニューをインターネットを通じて販売する[ネット通販]も注目を集めています。ネット通販を始めることで店舗以外に販路を全国に広げることができ、ランチやディナーなどのピーク以外の時間に厨房を効率的に稼働させることができるようになります(保健所の審査規定によっては共用できない場合がありますのでご注意ください(本文参照))
店舗で作った料理をネット通販で販売するためには製造業(総菜、菓子などジャンルによって異なります)の許可が必要です。ネット通販のメリットとネット通販開始までに必要なことをご理解いただき、導入を検討してみてください。
■目次
1.ネット通販のメリット
1-1.営業中の飲食店がネット通販を始める場合のメリット
1-2.ネット通販専用のキッチンを開業する場合のメリット
2.内装工事で必要なこと
3.ネット通販用WEBサイトの準備
3-1.通販サイトに登録して販売する
3-2.無料でネットショップが作成できる外部サービスの利用
3-3.自前のWEBサイトの運営
4.ネット通販で必要になるもの
4-1.食品表示ラベル
4-2.食べ方や調理方法の説明書
4-3.パッケージ
4-4.保冷剤、保冷バッグ
4-5.梱包用ダンボール
5. まとめ
1.ネット通販のメリット
ネット通販は営業中の飲食店が新規に始める場合とネット通販専用のキッチンを開業する場合の2通りがあります。それぞれのメリットについて分けて記載します。
1-1.営業中の飲食店がネット通販を始める場合のメリット
1)ピーク以外の時間に厨房を効率的に稼働できる
飲食店の売上はピークの時間帯に集中しがちなため、店舗の客席数が少なく回転率が悪いと思うように売上を伸ばすことができません。ネット通販を始めることで忙しさを分散し、厨房を効率的に回せるようになるので売上を伸ばすことに繋がります。
2)ネットを通じて店舗を知ってもらい販路を拡大できる
ネット通販では全国に販路を拡大できるので、商品の売れ行き次第でネット通販の売上が伸びるだけでなく実店舗の知名度も上がり、店舗への集客効果が期待できます。
1-2.ネット通販専用のキッチンを開業する場合のメリット
店舗を構えて集客する形態ではなくネット通販やデリバリーのみ行うキッチンを開業することも注目を集めています。メリットは以下の2点です。
1)工事費を抑えることができる
ネット通販専用のキッチンは客席やスタッフ用のスペースが必要なく内装にこだわる必要もないため、通常の飲食店と比較し大幅に工事費を抑えることができます。
2)賃料を抑えることができる
飲食店の売上は立地によって大きく左右されますがネット通販専用のキッチンであれば立地に関係なく売上を立てることができます。ネット通販を通じて商品を販売し売上を伸ばすことができれば店舗を構える、という方法も有効な手段の一つと言えます。
2.内装工事で必要なこと
ネット通販を行うには提供する料理の種類に応じて製造業の許可が必要となります。各製造業許可の種類や管轄の保健所によって規定は異なりますが、一般的に製造業許可を取得するためには以下の要件を満たす必要があります。
・厨房は他のスペースと天井から床まで扉等で仕切られた個室にする
・厨房内は流し、手洗い、給湯器を設置する
・厨房内の明るさは50ルクス以上を確保する
・床はタイル、コンクリートなどの耐水性材料を使用する
・内壁は床から1メートルまで防水処理をする
営業中の飲食店でネット通販を始める場合、ネット通販用に製造する食品の1ヵ月あたりの量、既存の客室と厨房の距離等により、厨房を個室にする必要がない場合もあります。ネット通販を始める際は工事開始前に内装工事で満たすべき要件、必要な製造業許可の種類について管轄の保健所に確認するようにしてください。
3.ネット通販用WEBサイトの準備
ネット通販用のホームページ制作は無料で導入できるものからアマゾンや楽天などの通販サイトに商品を掲載する方法もあります。通販サイトへの登録、ネットショップが作成できる外部サービスの利用、自前のWEBサイトの運営の3点の特徴について解説します。
3-1.通販サイトに登録して販売する
商品を登録するだけで簡単に販売でき、決済や配送なども通販サイト内のシステムが賄ってくれます。また、インターネットで商品名を検索した際に上位表示されるため、商品を多くの人に知ってもらえる機会が増えます。一方で月額利用料や商品を販売するごとに手数料がかかります。
アマゾンは月額利用料4,900円で販売手数料8~10%のプランと、月額利用料が販売数×100円で販売手数料8~10%のプランがあります。楽天は豊富なプランが用意されており月額利用料2万~10万円、販売手数料が2~7%かかります。
3-2.無料でネットショップが作成できる外部サービスの利用
決済機能やおしゃれなデザインテーマ、アクセス解析ツールなどが備わっているサービスが多く、これまでネットショップをはじめることが困難だった方も気軽に始めることができます。簡易な操作性でネットショップを運用できるので、商品を企画・生産・製造されている方が販売まで一括で対応することが可能です。販売手数料がかかりますがアマゾンや楽天などの通販サイトと比べると割安です。
代表的なサービスに「BASE(ベース)」や「STORES.jp」があります。それぞれ販売手数料は6%と5%となっています。
3-3.自前のWEBサイトの運営
WEBサイト制作や決済システムの導入、商品名を検索した際に上位表示されるためのSEO対策など、初期費用はかかりますが手数料がかからないことが特徴です。自前のサイトを有する一番のメリットとしてはブランド訴求を自由にできるメリットがあげられます。
4.ネット通販で必要になるもの
ネット通販用の自社ホームページの開設やネット通販サイトへの登録以外に以下の5点が必要です。これらにかかるコストも考慮して商品の価格を決めていきます。
4-1.食品表示ラベル
ネット通販はプレゼントやお土産など購入者と消費者が異なる場合も多いため、原材料や賞味期限、製造元などをしっかりと明示することが食品表示法で定められています。
4-2.食べ方や調理方法の説明書
必ずしも必要ではありませんが、調理法や開け方、盛り付け方、食べ方等をより詳細に記載しておくと配送後にお客様が困惑することがなくなります。きめ細かな配慮がリピーター獲得に繋がるので、できるだけ丁寧に記載した説明書を入れておくと良いです。
4-3.パッケージ
提供する商品によってものは異なりますが安全面を考慮すると真空パックして送ることが望ましいです。家庭用のものもプロ仕様のものもネットで3万~5万ほど購入できます。
4-4.保冷剤、保冷バッグ
商品が冷凍または冷蔵商品であれば必要となります。キッチンに保存しておき届け先への距離に応じて適切な量を入れておきましょう。
4-5.梱包用ダンボール
梱包をしっかり行うことで破損や形状が崩れることを防げるため、しっかりとした包材を選びことをお勧めします。また、梱包を丁寧に行うことはお客様の満足度や自社商品のブランド化にも繋がります。お店のロゴを入れてくれる業者等もありますので活用すると良いかと思います。
5.まとめ
店舗以外に販路を広げることができ、かつ厨房を効率的に稼働させることにもつながるネット通販は売上を拡大する大きな可能性を秘めております。
ネット通販を始めるにあたり必要な内装工事の要件や必要となるものについてご説明しましたが、既存の店舗で営業しているのであればまずは店舗販売をしてみることも有効な手段と言えます。
ネット通販を通して購入者が増えれば店舗への集客も見込めます。ネット通販でヒットしそうな商品があると考えている方は是非ネット通販の導入を検討してみてください。店舗事業から開始し通販事業に展開し、通販事業で大きな成功をしている店舗は全国に沢山あります。是非チャレンジして売上拡大につなげてください